my prism(マイプリズム)|「好き」を大切にするWebメディア https://m-prism.com 「好き」を大切にするWebメディア Thu, 01 Jul 2021 11:28:24 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.6.13 https://m-prism.com/wp-content/uploads/2020/09/cropped-fabicon-touka-32x32.png my prism(マイプリズム)|「好き」を大切にするWebメディア https://m-prism.com 32 32 ネイリスト姉妹が営む「Jasmine nail」。キラキラでハッピーなネイルができるまで。 https://m-prism.com/jasminenail/ https://m-prism.com/jasminenail/#respond Thu, 01 Jul 2021 11:28:24 +0000 https://m-prism.com/?p=330 ネイルサロンで仕上げてもらったお気に入りのネイルはもちろん、手持ちのマニキュアをサッと塗っただけのセルフネイルでも、爪がきれいになると嬉しくなりますよね。

今回お話をうかがったnorikoさんは、ネイリストとして日々お客様の理想のネイルを表現し、指先からたくさんのハッピーを生み出す爪のプロフェッショナル。

4歳上の姉keikoさんと姉妹で営むネイルサロン「Jasmine nail(ジャスミンネイル)」は、高い技術力と細やかな気遣いが好評で、リピーターの絶えない人気店として成長を続けています。

そんなnorikoさんに、姉妹でネイリストになった経緯からネイルにかける想い、将来のお話までじっくり語ってもらいました。

PROFILE

norikoさん
ネイリスト兼ネイルサロンオーナー。ネイリスト歴11年。JNAネイリスト技能検定1級・JNAジェルネイル検定上級取得。
エステティシャンからネイリストに転身後、ネイルサロン2店舗を経て2012年に独立。姉keikoさんとともにネイルサロン「Jasmine nail」を営みながら、韓国子供服とシルバーアクセサリーのセレクトECショップ「NicoMine(ニコマイン)」も手がける。
私生活では2児の母でもあり、子育てと仕事の両立に日々奮闘中。

エステティシャンから憧れのネイリストへ

norikoさん――まずは、norikoさんがネイリストを目指したきっかけから教えていただけますか?

noriko:もともとはエステティシャンを目指して美容学校に入って、卒業後は大手のエステサロンに就職したんです。
でもお客様に施術をするのは好きだったけど、営業トークが苦手で…。毎回高価な商品やコースをおすすめしないといけないのがつらくて辞めました。

そのあとに就職したのが、ジェルネイル専門のネイルサロンです。実は美容学校時代にはネイルの授業も好きだったので、エステのコースとネイルのコースどちらに進むか迷っていて。最終的にはエステを選んだんですが、ネイルもずっとやってみたかったんですよね。

――もともとネイルも得意だったんですね。

noriko:いや、何もできないのにいきなりネイルサロンに面接を受けに行ったんですよ(笑)。

でも、美容学校で学んだとはいっても基礎的なことだけで未経験なので、断られてばかりで。4~5店くらい受けて全部落ちたんですけど、1店だけ未経験でも雇ってくれるサロンがあったので入れてもらいました。

面接のときに自分のネイルを見られて、「それ自分でやったの?」と聞かれたので「はい!」と答えて。本当は友達のネイルサロンでやってもらったネイルだったんですけど、それを言ったら絶対にまた落ちると思って、とっさに…(笑)。

――熱意が伝わったんだと思います(笑)。

noriko:でもそれでほんとに何もできなかったらやばいので、必死で練習しましたね。お店に入ってからも、しばらくはアシスタントをしながら開店前や閉店後、家に帰ってからもずっと練習していました。

でもお客様を担当させてもらったら、すぐに失敗をしてしまって…。

――どんな失敗だったか聞いてもいいですか…?

noriko:オフ(ジェルネイルを外す施術)を担当させてもらったんですが、手際が悪くて不慣れなのがお客様にもすぐ分かったんでしょうね。
「待ってもいいから他の人に代えて」と言われてしまって…。

――それはつらい…。

noriko:そのお客様にも代わってもらうスタッフにも本当に申し訳なくて、恥ずかしさと悔しさでめちゃくちゃ泣いて落ち込みました。

でもおかげで「このままじゃダメだ!」と気づけたので、お店で働きながらネイルスクールに通って、ネイリスト技能検定2級と1級の資格を取って技術を磨きました。それからジェルネイル専門店からスカルプ※メインのお店に移りましたね。

今思うと、あのときちゃんと指摘してもらえて良かったなと思っています。

※スカルプチュア:自爪に人工爪を密着させて長さを出す施術。希望の長さや形にできるため、ジェルネイルよりもデザインの幅が広がるが、施術にはより高度な技術が必要。

姉もネイリストに。姉妹だからできた独立。

ジェルネイル――今は姉妹でネイルサロンを営まれていますが、もともとお姉さんもネイリストをされていたんですか?

noriko:姉は若い頃美容師を目指していたんですが、資格を取る前に妊娠が発覚して美容師の道は一度諦めるしかなくて。そこから子どもを3人産んで、ずっと子育てをしていたんです。

でも子育ても少し落ち着いてきて何か仕事を始めたいと考えていた頃に、私がネイリストとして働き始めたこともあって、姉にもネイリストをやってみないか勧めました。姉はもともと器用だしネイリストに向いていると思ったんですよね。

――それでお姉さんもネイリストを目指すことになったんですね。

noriko:私も当時は1級を取ったばかりで、自分の持っている知識と技術をそのまま姉に教えながら、お互いに勉強し合いました。でも姉は子どもがいて時間の制約があったので、技術を習得しても未経験で働けるネイルサロンを探すのはなかなか難しくて…。

どうしようか迷っていたときに、兄の友達が今度美容室を開業するからお店の一角でネイルができる人を探しているということで、兄が私たちを友達に紹介してくれたんです。

――すごいタイミング…!

noriko:そうなんです!これはもう二人でやるしかない!と思って、美容室の一角を間借りする形でJasmine nailを始めました。

お店を始めてからも姉はまだ資格を取っていなかったので、働きながらネイルスクールに通って、家に帰ってからは毎日深夜まで二人で練習する日々でした。

――想像するだけでめちゃくちゃ大変です…。努力の甲斐あって、今はお二人とも難関と言われるネイリスト技能検定1級とジェルネイル技能検定上級の資格を取得されていますよね。

noriko:はい、それがネイリストとしての絶対的な自信にもつながっていると思います。姉はもちろん、友達や家族にもたくさん協力してもらって達成できたことなので、本当に感謝しています。

――お姉さんとはもともと仲が良かったんですか?

noriko:そうですね。昔から何かあると必ず姉に相談していて、今もネイルのことだけじゃなくて、家のことや子どものことも全部姉に相談します。

ケンカもほとんどしたことがなくて、お店についてもその都度二人で話し合っていろいろ決めてきました。姉妹だからこそ、ここまでやって来られたと思っているので、もし一人だったら独立していなかったかもしれません。

爪がかわいいだけで気分が変わる。一人ひとりの理想を叶えるネイリストでありたい。

Jasmine nail――美容室の一角から始まったお店も、今では店舗を構えてリピーターも多い人気サロンに成長されていますよね。Jasmine nailの強みはどんなところだと思いますか?

noriko:独立して9年目になりますが、美容室でやっていた頃からずっと来てくださっているお客様もいて、本当にありがたいですね。

強み…と言えるかは分からないんですが、スカルプができるのは一つの大きなポイントかなと。

今はジェルネイルが主流になってきてはいますけど、長さを出す強度の強いスカルプはまだまだ需要があると感じています。ジェルにはできない立体的なアートや華やかなデザインができるので、スカルプを希望されてJasmine nailを選んでくださっているお客様は多いと思います。

スカルプ人気のスカルプネイル

――お客様にネイルをするときに何か意識されていることはありますか?

noriko:お客様の理想のネイルに少しでも近づけるように、というのは常に意識しています。

メニューの設定も決まったデザインから選んでいただくのではなく、お客様一人ひとりの希望に合わせて対応できるようにしていて。

爪は常に目に入るパーツなので、もし少しでも気に入っていない色やデザインになってしまうと、たとえお金を払ったネイルでもすぐに取りたくなると思うんです。
逆に気に入ったネイルだと、ふとしたときに目に入るだけでも癒やされたり、テンションが上がったりすると思うんですよね。

たかが爪で贅沢品かもしれないんですけど、爪がかわいいだけで気分が全然違うし、お客様もそれを求めて来てくれていると思います。だから、お客様が納得いくデザインにできるように、色味やデザインを細かく聞くようにしています。

施術中もその都度お客様の反応を見ながら、少しでも納得されていなさそうだったら「やり直しや別のデザインもできますよ」と確認するようにしています。

フットネイル

――細かい気配りがお客様に愛され続ける理由の一つだと思います。norikoさんにとってネイリストの魅力は何ですか?

noriko:自分の技術でお客様の気分を変えられるところかな。完成した後に「かわいい!」とか「テンション上がる!」とか直接言ってもらえるとやっぱり嬉しいです!

エステを辞めるときに上司から「ここで続かないなら何やっても無理だよ」と言われたんですけど、全然そんなことはなかったし、ネイリストになって良かったと思います!

――辞めようと思ったことはありませんか?

noriko:ないですね。もちろんつらいことや大変なこともありますが、好きなことを仕事にできて、独立して良かったと思います。

――天職ですね!最後に、今後の夢や目標を教えてください。

noriko:将来的にはネイルスクールを開いて、一緒にネイルができる人を育てられたらいいなと思っています。技術を教えた子たちが一緒にJasmine nailで働いてくれたら嬉しいです。

今は自分の子どもが小さくて私がフルで働けないぶん、姉に負担をかけてしまっているので、人を増やしたくて。人が増えたらいつかは新しい店舗も出せたらなと。

でもまずは、ずっと来てくださっているリピーターのお客様を大切にしたいので、目の前のお客様にしっかり向き合っていきたいと思っています。

客席

 


 

好きなことを仕事にするのは、楽しそうに見えるけれどきっとそれだけじゃない。
好きだからこそ苦しいことや、どうしようもない壁にぶつかることもあるかもしれません。

それでも「好きなことを仕事にできて良かった」と笑顔で語るnorikoさんからは、誇りと自信が伝わってきました。姉妹で支え合いながら自分たちのペースで前に進み続けるJasmine nailは、これからもきっとたくさんの人をネイルでハッピーにしてくれるはずです。

INFORMATION

「Jasimine nail(ジャスミンネイル)」

Jasmine nail

住所:岐阜県岐阜市日ノ本町4-1(MAP
営業時間:9:00~18:00(時間外相談可)
定休日:日曜日・不定休
電話番号:070-5642-0203
公式Instagram:https://www.instagram.com/jasminenail.8/

韓国子供服とシルバーアクセサリーのセレクトECショップ「NicoMine(ニコマイン)」:https://nicomine.official.ec/

NicoMine

 

Text & Photo by Ayumi Hoshi(@aym_prism
画像提供:norikoさん

 

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人生をかけて「好き」を表現し続ける。セーラームーンファンうさこさんの話 https://m-prism.com/usako/ https://m-prism.com/usako/#respond Mon, 15 Feb 2021 14:00:08 +0000 https://m-prism.com/?p=148 「月にかわっておしおきよ!」

この名台詞とともに1990年代に一大ブームを巻き起こした大ヒット作品美少女戦士セーラームーン

1991年に少女漫画雑誌『なかよし』(講談社)で連載がスタートした武内直子先生原作の人気少女漫画で、1992年にはテレビアニメも放送スタート。瞬く間に当時の少女たちを中心にあらゆる世代の人々の心をつかみ、日本だけでなく世界中の人々を熱狂させました。

作品の完結から20年以上経った今もなお多くのファンを魅了し続け、先日25年ぶりの新作劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』が公開されたことでも話題。

わたし自身も幼少期には生活の中心にセーラームーンが存在していたセーラームーン世代で、大人になった今もセーラームーンが大好きです。

そんなわたしが今まで出会った中でも、ひときわセーラームーン愛が突き抜けている人がいます。それが今回お話をうかがったセーラームーンファンのうさこさん(@princessusako)。

1992年のテレビアニメ放送開始から今まで、セーラームーンのことを考えなかった日はないと話す彼女は、コスプレや同人活動をはじめ、あらゆる形でセーラームーンへの愛を表現し続けています。

今回はそんなうさこさんに、セーラームーンにかける愛と情熱をたっぷりと語ってもらいました。

PROFILE

うさこさん
1992年のテレビアニメ放送開始時からのセーラームーンファン。コスプレイヤーとしても20年以上活動中。
独学で衣装制作を学び、セーラー戦士の戦闘服から敵キャラのコスチュームまで、作中に登場するあらゆる衣装を自作。他にも同人活動やグッズ収集などさまざまな方法でセーラームーンへの愛を表現し続け、セーラームーンに人生を捧げている。
好きなキャラクターはセーラーサターンとプリンス・デマンド。

周囲から引かれるほどセーラームーンが好き

――セーラームーンとの一番最初の出会いはどんな感じだったんですか?

うさこ:最初はアニメからですね。セーラームーンの前に放送されていた『きんぎょ注意報!』をずっと観ていて、その続きでセーラームーンが始まったので1話から観ていました。

普通の女の子が変身しておそろしい敵と戦うのが斬新で、すぐに夢中になりました!必殺技や決めポーズもよく練習していましたね。

――当時の思い出は何かありますか?

うさこ:土曜日の7時になるとテレビの前に正座してセーラームーンを観て、終わったら散歩に行って公園で一人、セーラームーンについて考えるのが習慣でした。

その日のセーラームーンを振り返って、自分の中で整理する時間にしていました。

――当時からセーラームーンへの愛は特別だったんですね。

うさこ:そうですね。それが今も変わらずずっと続いている感じです。

当時、周りからは引かれてたんですよ。小学生だったのでセーラームーンも終盤になると周りの子たちがだんだんアニメを卒業して、J-POPの歌手の話しかしなくなっていったんです。でも私はそういう流行にはまったくついていけず、ひたすらセーラームーン一本でした。

周りの子たちに「まだセーラームーン好きなの?」「またセーラームーン?」とバカにされても、「うん、セーラームーンが好き…」って。

持ち物や身に着けるものも全部セーラームーングッズだったので、上級生や先生からも「セーラームーンが好きな子」と認識されているくらい、周りからは浮いている子どもでしたね。

それでも、当時は思春期で周りに染まりたくないという反抗心からか、自分の好きなものはセーラームーンで、人と違うことが誇らしいくらいに思っていました。

――かっこいい!でもそこまで大好きだったら、アニメが最終回を迎えたときは相当つらかったのでは?

うさこ:正直アニメが終わって、ほっとした面もあったんですよ。

――えっ、意外!どうしてですか!?

うさこ:放送当時はとにかくグッズがめまぐるしく出ていて、あれも欲しい、これも欲しい!って思うんですけど、もちろんそんな全部買ってもらえるわけではなくて。追いたいのに追いきれない焦りがあったんですよね。

だから、いったん閉じてもらえたことでそれ以上は増えないので、気持ちに余裕ができたというか。そこからゆっくり当時欲しかったグッズを中古ショップやネットオークションで探して、何年もかけて集めていきました。

それにアニメの放送や原作の連載が終わったからといって、もはや生活の一部となっているセーラームーンが自分の中から消えることはありませんでした。

むしろ終わってからより深みにハマっていった気がします。

――なるほど!アニメや原作の終了後はどんなふうにセーラームーンとかかわってこられたんですか?

うさこ:アニメを見返したり、原作の単行本を読み返したりして自分の中でかみ砕いて、さらにセーラームーンへの理解を深めていきました。

アニメが毎週やっていた頃は、常に毎週新しい情報が入ってきて、「わ~!来週はどうなるの!?」って思っているうちにまた次の情報がもらえて、そのくり返しだったんですよ。

だから終わってからは自分のペースでもう一度じっくりセーラームーンと向き合って、整理することができました。おかげでもっと深くセーラームーンを知って、理解していきたいという気持ちがふくらんできましたね。

しばらくしてコスプレを始めて衣装作りやイベントに追われつつ、同人活動も始めたり、月に1回はカラオケでひたすらセーラームーンの曲を歌ったり…ずっとセーラームーンに追われる日々を過ごしているので、放送当時から今まで暇だった時期は一瞬たりともありません!

おもちゃの歴史が分かるセーラームーングッズ

うさこさん宅のセーラームーン部屋うさこさん宅のセーラームーン部屋

――グッズ収集を本格的に始めたのもアニメ終了後だったとのことですが、セーラームーングッズの魅力は何でしょうか?

うさこ:セーラームーンが放送していた90年代は、技術が急速に発展した時代だったので、当時のグッズにはとにかくいろんな新しい技術がどんどん使われていたんです。

セーラームーン人気もすごくて、新しいグッズを出せば売れる時代だったので、技術を試すのにもちょうど良かったみたいなんですよね。

だから、アニメが放送されていた5年間のグッズの中でも、めまぐるしく技術の進歩が見えるのが歴史的資料としてもすごくおもしろくて!そういう時代背景が見えるグッズが特に好きです。

例えばカードだと、印刷技術がまだ安定していなかったので、再版されると同じカードでも色が変わるし、柄も変わるんです。キラカードのホログラムの柄がパックによって違ったり…。

そういう差分があるところもコレクター熱が爆発するきっかけになって、差分違いも全部集めたくなってしまう(笑)。カードは掘れば掘るほど奥が深くておもしろいです。

また塗装の技術もめまぐるしく変わっていて、この指人形も新しいシリーズが出るごとに技術が上がっていくのが分かっておもしろいですよ!

カプセルトイの指人形(左から古い順)

――ほんとだ!少しずつクオリティが上がっていますね!

うさこ:そうなんです。最初はベースの色が髪の毛の色だったんですけど、次から肌色になっていたり、コストを下げるための試作が重ねられているのも分かっておもしろいんです。

おもちゃの歴史の資料館に置けるくらい、セーラームーングッズは奥が深い!

それから当時はグッズ関連のイベントで試作品が出て、そこで好評だったものが市場に出回ることもよくあったらしくて。試作品で少量しか作られていないグッズや、市場に出回ったものと試作品とでは色が違うものもあるんです!そういう試作段階のレアなグッズも集めたくなるんですよね。

左:東京ガリバー(バンプレスト直営の大型ゲームセンター)のロケテストでしか登場しなかった幻の手提げバック 右:ロケテスト版と市場に出回った製品版では、ピアスの色が違うセーラーちびムーンのぬいぐるみ

――それは大変だ…(笑)。うさこさんの特にお気に入りのグッズはどれですか?

うさこ:思い入れのあるものだと、当時一番最初に買ってもらったこの下敷きですね。

セーラーマーキュリーがセンターの下敷きセーラーマーキュリーがセンターの下敷き

――マーキュリーが主役のような構図!?(笑)こんなの出てたんですね!?

うさこ:すごいですよねこれ(笑)。いくらマーキュリーが当時人気だったとはいえ、主役のセーラームーンちゃんを差し置いて…。

でもなぜかこれが一番最初に買ってもらったグッズなので、個人的にはかなり思い入れがありますね。その後、筆箱や鉛筆、消しゴムなども買ってもらって、文房具は全部セーラームーンで揃えていたので、文房具類はどれも思い入れがあります。

それからおもちゃだと、このセーラーサターンのドールです!

「エクセレントセーラーチーム(セーラーサターン)」「エクセレントセーラーチーム(セーラーサターン)」

――かわいい!サターンはグッズが少ないですもんね。

うさこ:そうなんですよ。当時からサターンが大好きだったんですけど、グッズがなかなか出なくて!「サターン欲しい欲しい!!」って思い続けていたら、ついに夢にまで出てきたんです(笑)。

サターンのお人形が発売される夢で、目が覚めて「なんだ、夢か…」と思ったんですけど、数日後に地元のショッピングモールのおもちゃ売り場にこの子がいたんですよ!びっくりして夢なのか現実なのかよく分からないまま、どうしてもこれだけは今すぐ買わなければ!と親に頼み込んで、その場で買ってもらった思い出のお人形です。

――運命的!今後出してほしいセーラームーングッズはありますか?

うさこ:今はいわゆるセーラームーン世代、90年代にセーラームーンを見ていた20~30代の大人向けグッズがほとんどですが、子どもをターゲットにしたグッズも出てくれると嬉しいですね。

それこそ当時私たちが遊んでいたようなおもちゃとかお人形とか、できれば安価なもので。セーラームーン世代も子どもを持つ年齢になってきているので、自分たちが子どもの頃に刻まれた思い出を自分の子にもさせてあげたいと思う方も多いと思うんです。

私自身、20周年で最初にガチャが復刻されたときに自分の子どもとあちこちスーパーを探し回って、やっと見つけて一緒にガチャを回したのがすごく感慨深くて感動したので!

今は動画配信などで小さい子もセーラームーンを観てくれているみたいですし、次の世代を育てて後世に引き継ぐためにも、子ども向けグッズをぜひ!

衣装作りとコスプレでセーラームーン愛を表現

プリンセス・セレニティ

――コスプレイヤーとしても長く活動されているうさこさんですが、コスプレを始められたきっかけは何だっだんですか?

うさこ:学生時代にあまりにもセーラームーンが好きすぎて、友達から「同人誌即売会に行ってみたら?」と提案されたのがきっかけです。「セーラームーンの格好もできるんだよ」と教えてもらって。

今までそういう世界があることも知らなかったのでよく分かっていなかったんですが、とりあえず地元の同人誌即売会に友達と行ってみたんです。

衣装は洋裁をしている母の友達に頼んでスーパーセーラームーンを作ってもらって、ブーツは市販のブーツに母に赤い布を貼ってもらいました。あとは地毛をお団子にしただけの拙いコスプレだったんですけど(笑)。

――初めての同人誌即売会はいかがでした?

うさこ:もう未知の世界でひたすら感動でした!

遠征者がいるくらい大きなイベントだったので、周りには見たこともない本がたくさん並んでいるし、コスプレをしている人もいっぱいで…すごい世界があるんだなと衝撃でしたね。

そこで「コスプレ」という表現方法に初めて出会ってどっぷりハマってしまい、もう20年以上(笑)。

――20年…!?すごい!!ご自身で衣装を作られるようになったのはいつ頃からですか?

うさこ:その後、次は一番好きなセーラーサターンがやりたくて、もっとクオリティが高い衣装を用意しました。お金を貯めてコスプレ専門店の通販でサターンの衣装とウィッグを買って、サイレンス・グレイブ(セーラーサターンの武器)も業者さんに作ってもらって。

そのときは既製品だったので、自分で作るようになったのはその次からですね。今度はブラック・レディ(ちびうさが闇落ちして成長した姿)がやりたいと思ったんですが、ブラック・レディの衣装は既製品になくて、作るしかなかったんです。

それまで服なんて作ったことも習ったこともなかったので、完全に情熱だけで作りましたね。

ブラック・レディは今4着目で、自分の技術が上がった頃に作り直しているので成長が分かりやすいです。

 進化するブラック・レディの衣装進化するブラック・レディの衣装
最新版ブラック・レディ最新版ブラック・レディ

――進化がすごい…!うさこさんの作られる衣装のクオリティの高さにはいつも感動しているんですが、どんなところにこだわって作られているんですか?

うさこ:再現性を特に重視しています。あたかもセーラームーンのキャラクターがアニメの世界から飛び出してきたかのように作りたいので。

だからまず、生地選びからこだわりますね。どんな素材を使っているのか想像をふくらませて…例えばセーラー戦士の戦闘服なら、セーラー服が元だろうということで、実際の制服に使われているような素材や質感の生地を使います。

セーラームーン&セーラーちびムーンの戦闘服セーラームーン&セーラーちびムーンの戦闘服

うさぎちゃんたちの私服なら、日常着にありそうな着心地が良くてお洗濯もしやすい素材を選んで、あまり衣装っぽくならないように意識しています。

最近は色味にもこだわっていて、セーラームーン独特の色表現をどう再現するか考えるのがおもしろいです。影に黒が使われていないので、黒い生地を使わずに違う色の生地を重ねてみたり、偏光の生地を使ってみたりして、微妙な色合いを調整しています。

――本当に細かいところまで…!

うさこ:二次元を三次元で再現したときに生まれるギャップや違和感を埋めるのも課題ですね。

――というのは?

うさこ:例えば、プリンセス・セレニティ(主人公月野うさぎの前世の姿)のドレスの胸元の模様は平面だと全部等間隔なんですけど、立体にすると胸のふくらみがあるぶんどうしても等間隔にならなくて。

全部手縫いで刺繍してるんですけど、微妙に幅を調整して立体感を作りつつ、少しでも違和感やギャップが少なくなるように試行錯誤しています。

プリンセス・セレニティのドレスプリンセス・セレニティのドレス

セレニティの衣装は無限に解釈ができるので、この模様も毎回少しずつ変えて作り直していますが、何度作ってもゴールがなくてそこがおもしろさでもありますね。

プリンセス・セレニティのドレスの胸元部分プリンセス・セレニティのドレスの胸元部分

――なるほど。というかこれ全部手縫いなんですね!?ひぇー。

うさこ:そうです、ひたすら縫い続けますよ!(笑)

そして三次元は常に重力との戦いもあります。

――重力との戦いとは…!?

うさこ:スカートや胸のリボンはそのままだと重力があるので垂れちゃうんですが、アニメではもちろん垂れないのでそれは許されません(笑)。

だからリボンの上だけワイヤーを入れたり、スナップボタンで固定して動かないようにしたりして、重力に負けないように頑張って作っています。

セーラーマーズ

――見えないところまでこだわりがすごい!今までで一番作った衣装は何ですか?

うさこ:やっぱりセーラームーンの戦闘服ですね。依頼を受けて作ることも多いので、200着以上は作っています。

セーラームーンの戦闘服&プリンセス・セレニティのドレスセーラームーンの戦闘服&プリンセス・セレニティのドレス

――200着!?

うさこ:でも作るたびに少しずつどこかに改良を加えているので、まったく同じものは作っていないんですよ。

襟の形から硬さ、胸と腰の位置、スカートの形と丈、リボンの形…毎回細かく調整しているんですが、まだ自分の中で完璧と言えるものはできていません。だから作り続けていられますね。

完成したらそこで終わってしまうので、まだまだ伸びる余地があるのはありがたいです。

――かっこいい…。うさこさんにとってコスプレの魅力は何ですか?

うさこ:全力で好きなものを表現できることですね。

でもコスプレの作品作りは一人では全部できないことが多くて、いろいろな方と一緒に作り上げていく過程がまたおもしろいです!

衣装を作ってそれを着るための体作りもして、被写体は自分になりますが、撮影はカメラマンさんにお願いしますし、写真の編集は他の方にお願いすることもあります。複数のキャラを揃えたいときは友人で集まって、集合写真を撮ることもありますね。

場合によってはそこにイラストも混ぜて、世界観を作りあげていきます。

いろいろなジャンルの方と一つの作品を作り上げていく総合芸術のようで、やりがいがあります。

多様な価値観を認め合える社会になったからこそ伝わるセーラームーンの魅力

――続いて作品の魅力についてもお聞きしたいんですが、うさこさんが思うセーラームーンの魅力は何だと思いますか?

うさこ:ただキラキラして女の子の夢がつまっているだけじゃない、老若男女問わず心に問いかけるものがあるところだと思います。

セーラームーンの世界では敵も味方もみんな自分の大事な信念を持っていて、それを貫くためにもがき苦しみ、戦っています。だから視点を変えればセーラー戦士が必ずしも正義とは言えず、ダークサイドも決して悪ではないんですよね。

私は敵キャラのプリンス・デマンド(第2部に登場する悪役組織ブラック・ムーンの幹部)が特に好きなんですが、彼の中にも確固たる信念があります。

人々に長寿の命を与え、平和と安らぎをもたらす銀水晶の力をデマンドは幻想だととらえ、過去に戻り歴史の再生を試みます。それがセーラームーンの価値観とは真逆であるがゆえに理解されず、対峙することになるわけですが、果たして彼の信念は悪と言えるのでしょうか。

銀水晶があるせいで、セーラームーンははるか遠い未来まで戦い続ける運命を与えられてしまいます。それは破滅の道であり、それを止められるのは真逆の価値観を持ったデマンドなのではないかとも思うんです。

そうやって視点を変えることで見えてくる新たな魅力もたくさんあるんですよね。

――なるほど!ちょっとこれからデマンドの見方が変わりそうです。

うさこ:「敵にも戦う理由がある」こともそうですし、セーラームーンには当時の少女向け作品にはあまり見られなかった少年向け作品的な要素が多く取り入れられています。

そういった少年向け的なかっこよさを、少女漫画のキラキラしてかわいい世界観と絶妙に融合させて、「かっこかわいい」新たなジャンルを生み出したんだと思います。

――子どもの頃はただ「セーラームーンかわいい!おもしろい!」だけで深く考えず観ていたんですが、やっぱり今思うとすごく革新的な作品でしたよね。大人になってからあらためて「こんなに深い作品だったのか」と気づくことも多いですし。

うさこ:そうなんです。個人的な解釈ですが、私は武内直子先生が描かれた原作の最終回は、決してハッピーエンドとは言えないと思っていて。ラストシーンの後も、セーラームーンの未来には永遠に終わらない戦いが待っています。

そして平和と安らぎを与える石である銀水晶も、セーラームーンを前世から縛り付け、未来永劫戦い続ける運命を与えてしまったおそろしい呪いの石なんです。

だから、セーラームーンは掘れば掘るほど闇が深い作品だなと思っているんですけど、そこがまた深みがあって好きですね。すべてを語り尽くさず、読者に考える余地を十分に残しているところが。

視点を変えれば見える景色が変わってくる。だからこそ、他人と自分の価値観を違うものとして尊重し合うことが大事なんだと、セーラームーンにふれていると強く感じます。

今はいろんな価値観や多様性を尊重する世の中になってきたおかげで、セーラームーンという作品がより多くの人の心に響きやすくなっているのかなとも思います。

――確かに!20周年以降のリバイバルブームが今も続いているのは、そういう理由も大きいのかもしれないですよね。では、うさこさんにとってセーラームーンとはどんな存在ですか?

うさこ:人生そのものであり、成長していく糧をもらえる存在ですね。

衣装作りもセーラームーンが好きだからこそ続けられて、向上したいと思える。何事も継続が大事だと思っているので、そのためのモチベーションと想像力を無限に与えてくれる大事な存在です。

また、セーラームーンのおかげでいろんな人とも出会えました。自分とは違う価値観を持つ人たちと出会い、自分の中にはない意見をくれるからこそ、それを取り入れてまた成長していけます。

そして成長が見えるともっと自分が好きになれるんです。昨日の自分より今日の自分が好きだと思えるのは、セーラームーンとセーラームーンがつないでくれた出会いのおかげです。

生涯セーラームーンを追い続け、最期はセーラームーン仕様のお葬式で人生を終えたい

――これまでさまざまなファン活動をされてきているうさこさんですが、今後セーラームーン公式での動きに何か希望はありますか?

うさこ:公式はもう自由に動いてくださればそれでいいので、特に希望はないです(笑)。

今みたいに新しいグッズやイベントが次々発表されて、ついていくだけで必死な時期も好きですし、特別何かなくても時が止まっているわけではありません。その間にゆっくりとかみ砕くことができるので、そんな時間も私にとっては大切です。

どちらにせよこちらの愛は不動なので、変わらずどこまでもついていきます!

――さすがですね!では最後に、これからやりたいことや今後の目標があれば教えてください。

うさこ:いつか自分の家の中にうさぎちゃんのお部屋をまるごと再現するのが目標です。

内装をリフォームして家具も揃えて、クローゼットを開けるとうさぎちゃんの私服がずらっと並んでいるのが理想で!

うさぎちゃんとルナ

そのために、今はうさぎちゃんの私服作りを進めています。アニメのDVDを1話ずつチェックして、私服が何着あるか、同じ服を何回着ているかなどを数えるところから。

何回も着ている服はきっとうさぎちゃんのお気に入りの服なんだろうというのも想像して、少しずつ作っているところです。

――うさこさんの作られているうさぎちゃんの私服、どれも本当にかわいくて大好きなのでこれからも楽しみにしています!

うさこ:ありがとうございます。5年分あるので長い道のりですけど、一歩ずつ進めていって死ぬまでに実現できたらいいなぁと思っています。

そして私の最終目標は、最後にセーラームーンのお葬式を挙げて人生を終えることです!なので、できれば公式さんには棺桶と墓石を出していただきたいところなんですけど(笑)。

――棺桶と墓石(笑)。

うさこ:お葬式は私がこんなに大好きなセーラームーンとお別れする大切な儀式なんですよね。だからものすごくつらいんですけど、大事にしたいんです。悔しいのは自分で見られないことなんですけど!

だから事前に棺桶を買っておいて、晩年は棺桶をセーラームーン仕様にデコレーションすることを趣味にしようと思っています(笑)。燃やせる素材を使ってできるだけセーラームーンを表現するつもりです。

死装束用のセレニティの衣装も作るし、斎場には今までに作った衣装や作品を飾ってもらって、お別れするときにはみなさんにお花の代わりにセーラームーンのぬいぐるみを棺桶に一つずつ入れていただきたいです(笑)。

――めちゃくちゃ不謹慎ですけど、そのお葬式参列したすぎます(笑)。

うさこ:ぜひ来てください!ほんとにみなさんに言いたいんですけど、私より長生きして絶対来てくださいね!見届けてくれる人がいて初めて成立するので、イベント感覚で気軽に来てもらえたら嬉しいです。

出棺のときは『ムーンライト伝説』を流してもらって、2番の歌詞「不思議な奇跡クロスして何度も巡り会う」のタイミングで見送ってもらうように、家族にもしっかりお願いしてありますから!(笑)

そして私の人生最後のコスプレは、骨壺に黒い布をかぶせてもらってワイズマン(第2部に登場する敵キャラクター。頭からかぶった黒いローブの下は骸骨の姿。)です(笑)。

そこまでやれたら完全にやりきったと言えるので悔いはありません!

といっても、それまでにやることはまだまだたくさんあるので、これからもセーラームーンと共に人生を歩んでいきたいです。


 


 

「好き」を表現するにはいろんな形があるけれど、自分なりの方法を見つけて努力を重ね、全力で「好き」を表現し続けるうさこさんはやっぱり最高にかっこいい!

彼女と話しているともっとセーラームーンのことを知りたくなって、今よりもっとセーラームーンが好きになります。こんなに刺激をくれる人はなかなかいません。

出会えたことに感謝しながら、これからもうさこさんファンの一人として、彼女の活動をそっと追い続けていきたいです。

 

Text & Photo by Ayumi Hoshi(@aym_prism
画像提供:うさこさん(@princessusako

 

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木漏れ日のようにあたたかい場所を目指して。「hair salon Komorebi.」オーナー美容師kai.さんが語るお客様への想い https://m-prism.com/komorebi/ https://m-prism.com/komorebi/#respond Sat, 13 Feb 2021 10:00:37 +0000 http://m-prism.com 岐阜市内の閑静な住宅街の一角に、一席だけの小さな美容室があります。

2020年秋にオープンした「hair salon Komorebi.(ヘアサロン コモレビ)」。

「一人ひとりのお客様に丁寧に向き合いたい」というオーナー美容師kaiさんの意向で、予約は一人ずつのプライベートサロン。周りの目を気にせず、リラックスして過ごせる隠れ家のようなお店です。

店内は観葉植物やドライフラワーがセンスよく飾られ、緑でいっぱい。白い格子のガラス戸からはおひさまの光が心地よく差し込み、まさに「木漏れ日」のようなあたたかくやさしい雰囲気に包まれています。

このお店を一人で営むオーナー美容師のkai.さんは、子育てに奮闘中の2児の母でもあります。数か月前まで他店でパート美容師として働いていましたが、ライフスタイルに合わせた働き方を実現するために、独立を決意。自宅をリフォームしてお店を始めました。

子どもたちと過ごす時間も大切にしながら、kai.さんがつくるのはどんなお店なのでしょうか?そして、彼女が目指す理想の美容師とは…?

シャンプーの香りがふわっと広がる「hair salon Komorebi.」で、美容師kai.さんのお話をうかがってきました。

PROFILE

kai.(カイ)さん
美容師歴12年。2児の母。美容学校卒業後、岐阜県内の美容室2店舗を経て、2020年「hair salon Komorebi.」をオープン。
一人ひとりの好みやライフスタイルに合わせたスタイルの提案が好評。ヘッドスパはするのもされるのも好き。

「美容師が好き」から「自分にはこれしかない」へ

カット風景
——さっそくですが、美容師を目指したきっかけを教えてください。

kai.:昔から絵を描いたり何かをつくったりするのが好きで、高校卒業後に美容学校に進んだのが始まりです。

美容学校に入ったのはオープンキャンパスに行って楽しそうだったからなんですけど、振り返ってみるとちゃんと仕事にしようと思ったのは、授業で行った職場見学がきっかけだったのかな。

——どんな職場見学だったんですか?

kai.:着物屋さんで、成人式の前撮りに来ていた女の子の着付けの様子を見学させてもらったんです。

そのときに、最初はめちゃくちゃ不機嫌そう〜に座っていた子が、振袖を着せてもらって髪もメイクもキレイにしてもらったら、もう別人みたいにキラキラして笑顔になっていたんですよね!

それを見て「美容の力でこんなに人を変えられるんだ…!すごい!!」と衝撃を受けて、私も美容の仕事で生きていきたいと思うようになりました。

——そして卒業後に美容師の道へ…!実際に美容師として働き始めていかがでしたか?

kai.:最初に就職した美容院はいくつか店舗を展開する大きいお店だったので先輩もたくさんいたんですが、みんなおしゃれでおしゃべりも上手なんですよね。私はセンスもないし、話も下手で「美容師向いてないな…」と思いました。

でも自分で決めたことだし、せめてアシスタントからスタイリストになるまでは頑張ろう!と思って毎日必死でした。

——アシスタントさんは閉店後も夜遅くまで残って練習も大変なイメージがあります。

kai.:そうですね。基礎練習にはすごく厳しいお店だったので、シャンプーやカットの練習も大変で、休みもあまりなかったです。

でも、練習が厳しいとか休みがないのはそこまで苦ではなかったかな。結局全部自分の身になってお客様のためになることだから。

今はお客様から「kai.さんのシャンプーは気持ちいい」って言ってもらえることが多くて、あの頃厳しく指導してもらえたおかげかなと思っています。当時は大変でしたけどね(笑)。

シャンプー風景
——辞めたいと思ったことはなかったですか?

kai.:お店に入って3年ちょっとで無事スタイリストにはなれたんですが、実はその後しばらくしてストレスから体調を崩してしまい、最初のお店は辞めてしまって…。

美容師は好きだったけど正直向いてないと思っていたし、1回他の仕事をしてみようかなとも思ったんです。

でも、そのタイミングで友達の子どもが入院しちゃって、髪を切りに来てくれないかと頼まれて。で、行ったはいいもののスタイリストになりたてだから全然上手く切れなかったんですよね。

そこで初めて自分の甘さに気づかされました…。辞めるにしてもこんな中途半端じゃなくて、ちゃんと自分が納得するまでやり切ってからにしようと思ったんです。

——そこで美容師を続ける決意をされたんですね。

kai.:結局他にやりたい仕事もなかったし、美容師の仕事はやっぱり好きだし、あきらめたくなかった。

ここで辞めたら絶対他の仕事をしても上手くいかないし、劣等感を持ちたくなかったんです。

——「劣等感」というと?

kai.:その頃、周りの友達は大学を卒業して就職したタイミングだったので、それなりにお給料をもらってきちんと休みもあって…っていう状況だったんです。

私は自分が望んで大学に行かなかったのでそれはいいんですけど、その子たちと比べて自分は仕事も中途半端で…って劣等感を持つのが嫌だった。

自分がなりたくて美容師になったのに、ここで手放したらほんとに何もなくなっちゃうと思って。

今までは好きでやってきたけど、ちゃんと向き合わないといけない。自分には美容師しかないから、これを極めないといけないんだって思うようになりました。

カット手元

——一つのターニングポイントだったわけですね。その後、次のお店に?

kai.:そうですね。大きい美容院だとなかなか一人のお客様としっかり向き合えないもどかしさもずっとあったので、もう少し小さいお店を探しました。

それまでも私なりに一人ひとりに向き合ってやっていたつもりなんですけど、どうしても大きいお店で一人のお客様に丁寧に対応するには限界があるし、予約もいっぱいまで埋められるのでいつも時間がギリギリで焦ってしまって、それがお客様にも伝わるし…。

それで、見つけたのが最近まで働いていたお店です。女性オーナーが子育てをしながら自宅の隣にお店を構えて少人数でやっているところで、アットホームな雰囲気がいいなと思って決めました。

コロナで直面した子育てしながら理想の美容師を追求する難しさ


——kai.さん自身もその後結婚されて、お子さんも二人生まれていますよね。以前と働き方は変わりましたか?

kai.:そうですね。長男を生んで仕事に復帰してからはずっとパートで勤めていました。

——子育てと美容師の両立は大変そうです。

kai.:仕事は好きだし頑張りたいんですが、どうしても働ける時間が短くなるし、子どもが熱を出して急遽仕事を休まないといけないこともあって。そうなると他のスタッフにもお客様にも迷惑をかけてしまう。

そのことでずっと引け目を感じていました。でも、子どもとの時間も大切にしたいし…。

——それで独立を考えるように?

kai.:そうですね。どうしたら子どもとの時間も大切にしながら、お客様一人ひとりにしっかり向き合っていけるんだろう?と考えたときに、自分でお店をやるのが一番いいのかなって。

それから、数年前…まだ20代の頃に同級生の友達が病気で亡くなったことも大きいかもしれません。

それまで若くして病気で亡くなるなんて、テレビや映画の中でしか見たことがなくてあまり現実的に考えたことがなかったし、その友達もすごく元気な子で病気になるなんて思いもしなかったんですよね。だから「本当にこんなことがあるんだ…」とショックで…。

生きているうちにちゃんと自分がやりたいこと、自分にできることをやろうと思うようになった一つのきっかけでした。

なので数年前から漠然といつかは独立したいというのは頭にあったんですが、本格的にやろうと決めたのはコロナがきっかけです。

——わりと最近…!

kai.:コロナでいきなり子どもの学校と幼稚園が休みになったので、仕事に行けなくなって。それまでも子どものことでお店に迷惑をかけることが多かったのに、さらに仕事と子どもを天秤にかけて考えないといけないことが増えてしまったんですよね。

家でお店をやれば子どもの都合に合わせながら、お客様一人ひとりにも合わせられると思って決断しました。

——自宅でお店をやると決めて、ご家族の反応はいかがでした?

kai.:幸い家族や周りの人はみんな「いいやん!やりなよ!」って賛成してくれて、応援してくれたのでありがたかったです。

——お子さんは?

kai.:息子に「お母ちゃん、ここでお店やろうと思うんやけど、どう思う?」って聞いたら、「ここは場所がわるいからだめだよ~」とか現実的なこと言われて(笑)。

確かに住宅街なので店舗としての立地はかなり悪いですよね。

私も「だよね。場所悪すぎだよね~。」と返すと、息子が「お客さん通らないからチラシつくろうよ!」って言ってくれて嬉しかったですね。

——しっかりした息子さん!

kai.:独立を決めてから子どもたちには「自分のことは自分でできるようになってね!」と言い聞かせてます(笑)。

下の子はまだ年中さんなので難しいですけど、上は小学校に入ったので「頼りにしてるよ!」って言うと、張り切って妹の面倒も見てくれます。お兄ちゃんなので頼られるとやる気になるみたいです。

——頼もしいですね。

kai.:実際は毎日子どもたちに怒ってばっかりなんですけどね(笑)。

でもみんなが応援してくれてるぶん、ちゃんと頑張らないとなと思ってます。

木漏れ日のようにあたたかく、お客様に寄り添えるサロンを目指して

Komorebi.自宅を改装してつくった「hair salon Komorebi.」

——「Komorebi.」という名前の由来を教えてください。

kai.:まずコンセプトから決めようと思って、自分がやりたいこととか、今の自分にできること、足りないもの…いろいろ考えて全部ノートに書き出しました。 想いがブレるから書いたほうがいいって聞いたので。

そこからどうしたらお客様に来てもらえるのかをめちゃくちゃ考えました。でも、考えれば考えるほど全然コンセプトが決まらなくて…。万人受けしようとすると結局無個性になっちゃうんですよね。

だから、自分がどうしたいかをはっきりさせようと考えた結果、最終的に「お客様が疲れたときに来たくなるようなあたたかい、心地よい場所にしたい!」にたどり着きました。

あと、もともとグリーンや自然が好きだったので、お店をやるならグリーンはたくさん置きたいと思っていて。「グリーンがあって、あたたかい、心地よい場所」にハマったのが「木漏れ日」でした。

Komorebi.

――すごく素敵な名前だと思います!コンセプトが決まって、その後はどうやってお店を作っていったんですか?

kai.:ずっと担当させてもらっているお客様の名前を全員書き出して、「○○さんに来てもらいたいからあれを用意しよう」という感じで、具体的にイメージしながら決めていきました。

シャンプーのときに頭が下がる姿勢が苦手な方がいたので、高さや角度を調節できるシャンプー台にしたり、足が不自由な方や車いすの方もいたのでバリアフリーにしたり。

パーマやカラーの薬剤もできるだけお客様にやさしい、においや刺激が弱めの自然派で高品質なものを選びました。

――なるほど。バリアフリーの美容室はまだまだ少ない印象ですが、そこにはこだわりがあったんですか?

kai.:そうですね。バリアフリーの美容室っていうと、あんまりおしゃれじゃないというか、ちょっと福祉施設みたいなイメージがあるじゃないですか。

でも、車いすでも若い女の子とか、おしゃれな美容院に行きたい方もいると思うんですよね。そういうお客様にも来たいと思ってもらえる場所にしたいなと思いました。

バリアフリー車いすやベビーカーでも来店しやすいスロープ付きの入り口

あとこれまで勤めていたお店では、足が不自由なお客様が来てくださったときにスムーズに案内できないことがあったんです。狭いスペースで段差もあるのでどうしても時間がかかってしまって…。

でも、大きいお店はもちろん、いくら少人数でも他のお客様やスタッフがいると、一人ひとりのお客様に合わせて対応を変えるのはなかなか難しいんですよね。お客様にも気を遣わせてしまうし。そこにもどかしさを感じたのも独立を考えるようになった理由の一つです。

自分一人でお客様も一人ならそういうときもちゃんと対応できるし、来られない人には車で迎えに行くこともできるし、訪問美容にも行ける。

もちろん他のお客様に迷惑をかけないように上手く調整していかないとダメですけど。

――「訪問美容」は、お客様の自宅に行ってカットするんですか?

kai.:そう、母の知り合いで車いすの方がいて、定期的にお家に行ってカットをさせてもらってます。

それから病院や福祉施設での訪問美容を専門でやっているところもあって、そこのスタッフとしてときどきお手伝いに行かせてもらったりもしています。

――以前から訪問美容には行かれていたんですか?

kai.:行けるときはそうですね。でもパートで働いてるとただでさえ子どものことで融通利かせてもらってるのに、さらに訪問美容で…ってなるとなかなか難しくて。

これからは自分で調整できるので、訪問美容ももっと行きたいと思っています。

――お店に来てもらうだけじゃないんですね。

kai.:普通、美容院ってお客様が来るのをただ待つしかないじゃないですか。

でも、ずっと担当させてもらってたおばあちゃんがいきなり来なくなったりすることがあるんですよ。それでもこっちからは何も連絡できなくて、そこで終わっちゃうんですよね…。病院や施設に入られたり、亡くなってしまったりしたら。なんだかそれが私はすごく悲しくて……。

私なんかでも何かがいいと思って続けて来てもらえてたなら、私にできることはもっとやってあげたいと思うんですよね。

だから、もし来てもらうのが難しいなら、私が行けるようにしておけば一生やってあげられるかなと思って。

おしゃれ美容師にはなれなかった自分にできること

――なかなかそこまで考えてくれる美容師さんは少ないと思います。kai.さんがお仕事をする上で大切にしていることはありますか?

kai.:お客様一人ひとりに合わせることですね。

先輩たちはみんなおしゃれで、かっこよくて、おしゃべりも上手で、でも私はどれもダメ…じゃあ自分には何ができる?ってなったときに、たどりついたのがそこだったのかな。

お客様が求めるカットをするのもですけど、シャンプーの時間が短めがいい人には短めにしたり、話がしたい人とはいろいろお話したり。逆にほうっておいてほしい人もいると思うので、そういうときは必要以上に話しかけないでゆっくり過ごしてもらうとか。

できていないことも多くてまだまだなんですけどね。

――kai.さんにとって美容師の魅力は何ですか?

kai.:やっぱりお客様に喜んでもらえることです!しかもその場で直接反応をもらえるのが嬉しい!

カットでもシャンプーでも、美容師にとっては当たり前にできることでもすごく喜んでもらえると、「こんなことで喜んでもらえるなら、いくらでもやりますよ!」って思います。

それに美容師をしていると、お客様に2〜3ヶ月に1回は会えて、もし気に入ってもらえたら一生会えるじゃないですか。

お客様に起こった日々の嬉しいことや大変だったことを聞かせてもらえて、一緒に喜んだり悩んだりできる。ご年配のお客様からは、これまでされてきたいろんな経験や歴史を聞かせてもらえて、学ばせてもらうこともすごく多いんです。

お客様の人生のそばにいられて、節目節目に関わらせてもらえるのが本当にありがたくて幸せで。こんな経験ができる仕事、なかなかないんじゃないかなと思います。

――今後挑戦したいことや夢はありますか?

kai.:訪問美容ももっとやっていきたいし、いつかカンボジアとか発展途上国に行ってカットもしたいんです。

――カンボジア…!?すごい!

kai.:日本のカットの技術はすごく高いので、それを向こうの若い子たちに教える活動があるみたいなんです。そういうのにもいつか参加できたらなぁと思っていて。

もちろん子どももいるし今すぐには無理なので、いつ実現できるか分からないですけどね。

――めちゃくちゃかっこいいです!他に何かやりたいことはありますか?

kai.:近いうちにやりたいのは、児童養護施設のカットのボランティアです。

カンボジアに行きたいのもそうなんですけど、やっぱり自分に子どもがいるからか、子どもにかかわることで美容師の自分ができることをやっていきたいと思います。

まあまずは、お店を安定させないことには始まらないので、お店をちゃんと軌道に乗せることが第一ですけどね!頑張ります!

――「Komorebi.」にはどんなお客様に来てもらいたいですか?

kai.:お客様の声を聴くこと」を大事にしていきたいので、話をちゃんと聴いてほしい人に来てもらえたら嬉しいですね。

大きいお店だと「こんなこと言ってもやってもらえないかな」とか「本当はこうしてほしいけど…」とか、いろいろ思ってることを言えないお客様もいると思うんです。でも、ここではそんな変な気を遣ってほしくなくて!

遠慮なく何でも言ってほしいし、私ができることはやっていきたいので、お客様に気軽に相談してもらえるお店にしていきたいです。

 


 

お客様一人ひとりの顔を思い浮かべるようにゆっくりと今の想いを語ってくれたkai.さん。お店のあたたかくやさしい雰囲気は、彼女の人柄によるところも大きいのだと思います。

kai.さんのやさしい気持ちがつまった「hair salon Komorebi.」。

こんな美容室を心待ちにしていたたくさんの人たちが、彼女のもとで笑顔になっていく未来が見えるような気がしました。

INFORMATION

「hair salon Komorebi.(ヘアサロン コモレビ)」

住所:岐阜県岐阜市萱場町3-25-5(MAP
営業時間:9:00〜15:00(時間外相談可)
定休日:日曜日・祝日・月曜日
電話番号:058-337-1901
公式HP:https://hair-komorebi.jp/
Web予約はこちら

 

Text & Photo by Ayumi Hoshi(@aym_prism
画像提供:Kai.さん

 

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はじめまして!my prismです https://m-prism.com/my-prism/ https://m-prism.com/my-prism/#respond Sat, 13 Feb 2021 02:00:45 +0000 https://m-prism.com/?p=76 はじめまして。my prism(マイプリズム)へようこそ。

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そして、関わってくださった方が愛するものを今よりもっと好きになれたら幸せです。

まだまだ歩き始めたばかりで至らぬ点も多いと思いますが、みなさんどうぞよろしくお願いします。

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